In the beginning there were no words:the universe of babies

赤ん坊の宇宙 その驚くべき自我のはたらき

 

1973年にEducational Solutions. Inc(米国ニューヨーク)より初版が出版されました。英語版は issuu で閲覧できます。

 

内容 

Introduction:The Instruments for Study (どのように赤ん坊を研究するか)

1. Prenatal Preparation (生まれる準備)

2. Entering the World (生まれ出る)

3. Processing Energy (エネルギーの処理)

4. The Temporal Hierarchies (時間の階層)

5. Talking (口をきく)

6. Speaking (言葉を話す)

7. Learning Other Things (いろいろな事柄を学ぶ)

8. The Love that Babies and Young Children Need (赤ん坊が幼い子らが必要とする愛)

9. For the Education of the Very Young (幼いものの教育のために)

日本語訳は下記翻訳版より


 

1988年にリーベル出版より土屋澄男氏の翻訳による日本語版が出版されました。その際寄せられたガテーニョ自身による紹介文です。

 

原著者より日本の読者へ

 私の著作『赤ん坊の宇宙』が日本語に翻訳されていると聞いて、たいへんうれしく思います。

 実のところ、この本は英語を母語とする人々にとっても決して易しい本ではありません。それにもかかわらず、日本人の読者が理解できる下地にしようとしてくださる方がおられることに敬意を表します。この本の中で、私は三十年以上にわたる幼い子供の研究から得たいろいろな経験を述べましたが、その研究は通常の方法と異なっており、その記述は普通の説明の仕方とは違っております。ここに述べられている事柄は親にも教育者にもきっと役立つものと確信していいますが、読者の方々は普通の本を読むのと違って、しばし立ち止まって熟考することが必要になるでしょう。

この翻訳をお読みになって、幼い子供たちや学校の児童たちを理解するのにどれだけ役立ったかを、読者の方々からぜひ聞きたいと思います。というのは、それがこの著作の目的であり、私がこの本を書いた時には、だれかが幼い子供に代って発言するとすれば、私こそその人になろうと考えたからです。

 私たちがみな知っているように、幼い子供には発言権がなく、ましてや圧力団体にはなりません。大きくなるにつれて、大人たちからうるさがられるだけです。小供たちの世界がどんなものかを大人たちにはっきりと見せるために、だれかが名乗り出なければなりません。なぜなら、生まれてからの子供たちの生を管理し規制するのは大人たちだからです。この本は、すべての人の生における幼児期のもつ意味について、真剣に、総合的に考えるきっかけとなるはずです。たぶん、親と子の衝突に代って、協調と調和が生まれるでしょう。

1986年4月

カレブ・ガテーニョ

 


読者からのコメント

 

 ■ 1人でじっくり、グループでたっぷり、読む!   SW Language Center 「カレブ・ガテーニョ博士の著書を読む会」

ガテーニョ博士の大胆かつ緻密な観察眼で捉えられた赤ん坊の宇宙が、今の自分の原点であることを改めて考えさせられる。何かが「わかる」わけではない。自分自身を根底から揺さぶられ、そこを拠点に動き出したものに係わることで自分が「かわる」実感を得る。「一冊の本を読んで自身の中で時間をかけてじっくり完結すること」と「一冊の本からインプットされたことをアウトプットし、たっぷりシェアすること」で得られるものはいずれも自分と自分自身との対話の機会を与えてくれる。

■ 読んだことをすぐに理解しなくて良い本  Yoko Yasuda

この本は、30年前には唯一の日本語訳があるガテーニョ本だった。翻訳も(原本も)難解で、はじめは一人では読めなかった。しかし、理解できないことを保留しながら読み進むことで、疑問が自分の内側で熟していく体験ができた。読んだことをすぐに理解しなくて良い本。何度も繰り返し読むことで自分の原点に触れられる。今も時々ページを開くが、どのページにも心に直接語りかけてくるような文章が見つかる。「当たり前にできるようになる」「自然にそうなる」という見方をせず、人間の成長過程を細かく観察している。それは客観的に自分と切り離すのでも、主観的に自分に寄せて解釈するのでもないガテーニョ流の観察方法。ガテーニョ理論の根幹を成す考えが詰まっている。自分が自分を作ってきたということが実感できる本。

 

■ 赤ん坊はベッドの中で自分の時間をどう過ごしているの??? Noriko Onigo

こんな問いを投げかけられたら、「えっ?」「どういうこと?」

これが私の第一の反応でしたし、おそらく多くの人にとっても同様でしょう。

**Caleb Gattegno の「赤ん坊の宇宙・the universe of babies」の序論 (訳:土屋澄男)でGattegnoは言っています。

私が赤ん坊のとき、他のみんなと同じように、私はただ眠ったり、食べたり、排泄したりすることしか知らないように見えたでしょう。

第3者が私について言えること、また実際に言ったことは、そんなものでしょう。しかし、私が以前に一度もしたこともないそうした事柄が全部できるようになるためにどれほど一生懸命に努めていたかは、誰も知らなかったのです。

実際に、親は自分が子供のときにどう時間を過ごしたかを知らないし、自分の子供がどう時間を過ごしているのかも知らない。**

皆さん、自分が赤ん坊のときに自分の時間をどのように使っていたかについて、もし、少しでも興味、好奇心を覚えたら、Gattegno が書いた「赤ん坊の宇宙」を手に取ってみませんか。自分がどのように自分を作ってきて、現在の自分になったのかについてGattegno独特の観点から深く知ることになり、新しい、しかも驚異すべき宇宙が皆さんの前に広がってきます。

 

■ 人間の本質を理解するための本 Junko Shinada

この本と出会って人間としての自分の捉え方が変わりました。物心つく前の自分のことは覚えていません。しかし、かすかに残っている最初の記憶の前にも、確かにすでに自分は存在していました。赤ん坊として幼児としての自分は、現在の自分につながる気の遠くなるほどたくさんの複雑な仕事に毎日取り組んでいたというのです。にわかには理解しがたかったですが、いくら考えてもこれを否定することはできないのです。自分がなぜ聴けるのか、見えるのか、体を動かせるのか、例えば手でカップを掴めるのか、複雑なシステムを一つひとつ作り上げてきたと考えるしかないということがわかりました。確かに始めはできなかったのですから。ガテーニョは、その複雑なプロセスを緻密にロジカルに示しています。